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ひとりの佐世保

私の出身地は長崎県佐世保市なのだが、有名なご当地ソングがないのが常々不満であった。
ある日、何気なくCDショップでさだまさしのCDを手に取ると、そのものズバリ「佐世保」という曲が。
きっと佐世保の海と島が織り成す美しい風景をバックに、恋に破れた女が癒されたり、男が永遠の愛を誓ったり、まあ分からんが、とにかく佐世保の風景が重要な要素として登場する曲に違いない。
それだけで購入。さだまさしの25周年記念アルバム「季節の栖」(ときのすみか)。

帰って聴く。作詞はさだまさしでなく藤田恵美さん。
「うむ…。」
大いに不満だね。
主人公の父と母は故郷の佐世保で出会い、わけあって佐世保を逃げ出したのである。主人公が小さい頃、父からは佐世保の話をいつも聞いていたが、内容はよく覚えておらず、母からは一度も故郷の話を聞いたことはない。それ以来故郷に帰っていない両親だが、寂しかったり帰りたくなったりしたことはなかったの?主人公も(おそらく)佐世保に行ったことなどないが、佐世保のことはもうひとつのふるさとのように思う、という内容である。

不満だね。
佐世保である必然性がないのだ。

例えば私の大好きだった祖父は小値賀(おぢか)という島の出身なのだが、私は行ったことなどない。しかし自分のルーツのひとつとして私は小値賀を認識していて、遠いふるさとがあるような気持ちになる。
この曲のタイトルを「小値賀」と名づけても、かなり通用しそうなのだ。
佐世保の風景の描写として
坂道多く 海はすぐそば
異国の人 すれ違うところ
というフレーズがあり「小値賀」で通し切るのは無理だと思うが、じゃあ「長崎」ならどうだろう。
「長崎」でも全く違和感ない。「神戸」とか「横須賀」とか「横浜」でもいいかもしれない。
不満である。
作詞の藤田恵美さんごめんなさい。しかしダメなものはダメだ。泥臭いご当地ソングを勝手に求めている私の目から見るとまるで失格だ。
恐らく藤田さんにはご当地ソングを書く意識などなく、不条理な不満だが、しかたない。
そこで、じゃあ自分自身で「ご当地ソング」のエッセンスを十二分にちりばめた歌詞が書けるのか?実験してみよう。

ひとりの佐世保 作詞・あかさたな

ひとり降り立つ 西端の
終着駅で 振りかえる
「おかえりなさい」穏やかに
潮の香りが 出迎える
うけとめて ひとりの佐世保
ゆるしてね ひとりの佐世保

延々続く アーケード
行き交う人は みな他人
あなたの姿 探しても
夜店公園 影もなし
しかたない ひとりの佐世保
かえれない ひとりの佐世保

展海峰の 絶景を
共に喜ぶ 人もなく
離さなければ よかったと
西日の中で 涙する
もどれない ひとりの佐世保
ゆうまぐれ ひとりの佐世保


…自分でも不満だね。
なんかこう、この街独特の感じというのか、実際に住んでいた人間でなければ書けないような歌詞を書いてみたいんだけど。難しい。

自分で書く難しさを実感した後で藤田恵美さんの「佐世保」の歌詞を読むと、「これもありだな」
と 妥協 思ってしまう。
実際に今生活している人のことばを詞に綴るのもいいが、遠くにありて思うのもひとつの手段かなと。
そう思うと、自分の行ったことがない場所の「ご当地ソング」を書いても一向に構わない。
楽しみが広がるじゃないか。

ちなみに藤田さんの「佐世保」、ご両親を見る目が優しい、いい歌だよ。
by akasatana-xyz | 2005-02-14 09:12 | ご当地ソング
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